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「派遣は3年で契約終了」と言われた日に。その決まりは、あなたに向けて書かれていません

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先に、いちばん知りたいことに答えます。

この記事の結論


「3年なので、ここまでです」——その決まりは、あなたに向けて書かれていません。

「3年を超えて同じ人を出してはいけない」という禁止が、派遣会社の側に掛かっているだけです。

そしてもう1つ。

同じ「3年」という線を境に、派遣会社の側では「努めなければならない」が「しなければならない」に変わります。

あなたの終わりの線は、会社側の手続が始まる線でもあります。

この記事では、そこを条文から確かめていきます。

目次
  1. 趣旨がどうであれ、いま起きているのは「終わり」です。そこは動かしません
  2. 「そういうものだよ」では、答えになっていないですよね
  3. 禁止されているのは、あなたではなく「3年を超えて同じ人を出すこと」です
  4. 同じ作業着を着て、同じ作業をしているのに、期限があるのは自分だけ
  5. 後任の引き継ぎを、自分がやる。——その気まずさに、うまい対処法は無いと思います
  6. 同じ3年を境に、派遣会社の側では「努めなければ」が「しなければ」に変わります
  7. 「頼んでみましたが、駄目でした」で終わりにできないことになっています
  8. 「終了の直前ではなく、早期に」——国の文書のほうに、そう書いてあります
  9. 別の現場を出されたとしたら、それは4つのうちの2番目です
  10. いまの工場で募集が出たら、あなたに知らせることになっています
  11. 明日できること その日付は、あなたが来る前から紙に書いてあります
    1. はしごにしておきます。どれを選んでも大丈夫です
    2. 「言ったら、次を紹介してもらえないのでは」について
  12. ここから先、どうしたいかを選ぶ(3つの分かれ道)
    1. ① この職場で働き続けたい/まだ何も言われていない
    2. ② 派遣ではない雇い方で、この工場で働きたい
    3. ③ 次の現場を探す
  13. それでも決まりが動かないと感じたときの窓口
  14. その日付は、あなたが来る前から、そこに書いてありました

趣旨がどうであれ、いま起きているのは「終わり」です。そこは動かしません

最初に、動かないことを書いておきます。

趣旨がどうであれ、いまあなたに起きているのは「終わり」です。そこは動きません。 制度の話をしても、日付は近づいてきます。

そのうえで、この記事の範囲を切っておきます。

この記事の範囲


この記事は、「3年なので」と言われた場合の話です。

契約が終わる理由は、それだけではありません。だから「あなたの評価とは関係ありません」と、全部のケースについて言うことはできません。

書けるのは、ここまでです。その線が「3年」という数字で引かれているなら、その数字は、あなたの働きぶりを見て決められたものではありません。

数字の出どころの話です。それを、これから条文で確かめます。


もう1つ、先に正直に書いておきます。

私は派遣で働いたことがありません。だから「わかります」とは書けません。

代わりに、条文と省令と指針を、全部読みました。書けるのはそっちです。

「そういうものだよ」では、答えになっていないですよね

同じ問いが、質問サイトにずっと残っています。

  • 2015年——業務は同じなのに部署名が変わり、期限がまた3年になった
  • 2022年6月——「3年経ったらやはり終了と言われましたか?」
  • 2022年8月——「派遣3年ルールって結局誰の得になっているんでしょうか?なんで見直さないのでしょうか?」
  • 2023年6月——製造の現場から。3年勤めたあと、次の現場の話
  • 2024年2月——満了の前に、派遣会社から連絡は来るものなのか
  • 2024年11月——希望を言ったら、次を紹介してもらえなくなるのではないか
  • 2025年1月——辞めたくないのに、明日から新しい派遣社員が出社する

11年です。2015年の書き込みと、2025年の書き込みが、同じことを聞いています。

そして、返ってくる答えのほうです。いちばん下の2025年1月の投稿——辞めたくないのに、明日から後任が来る——についた回答は、「派遣契約である以上仕方が無い事」と受けとめるところから始まっていました。回答者が冷たいわけではありません。制度の説明としては、そのとおりです。

検索の候補にも、「ひどい」「クビ」といった言葉が並びます。行き場のない言い方です。

でも、「そういうものだよ」では、答えになっていないですよね。

3年やってきた人が知りたいのは、それが自分のせいだったのかどうかなんですから。

2023年に、こう書き込んでいる人がいます。同じ派遣先で3年の契約満了になり、直接雇用を希望したものの、どの雇用形態も派遣の有期雇用よりお金がかかるらしく、断られたという人です。

いっそわたしに能力が無いと言ってくれれば納得できたのですが、あまりに無慈悲な気がしてなりません。

能力が無いと言われたほうが、まだ納得できた。

そう書くくらい、「決まりだからです」という説明は、飲みこみにくいものなんだと思います。理由が自分の側にあるのか、それとも別のところにあるのかが、分からないままになるので。

禁止されているのは、あなたではなく「3年を超えて同じ人を出すこと」です

ここで1つだけ、聞かせてください。

「3年なので」と言われたんですよね。それ、誰に掛かっている決まりだと思いますか。

条文はこうなっています。

第三十五条の三 派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(…)を行つてはならない。

労働者派遣法 第35条の3(e-Gov法令検索/太字は筆者)

主語は「派遣元事業主」。あなたを雇っている派遣会社です。

そして、対になる条文がもう1本あります。

第四十条の三 派遣先は、…組織単位ごとの業務について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(…)の役務の提供を受けてはならない。

労働者派遣法 第40条の3(e-Gov法令検索/太字は筆者)

(この40条の3は、事業所ごとの3年が延長されたあとの話です。延長されていなければ、40条の2のほうで3年で止まります。)

こちらの主語は「派遣先」。あなたが毎日通っている、あの工場です。

つまり「3年」は、出す側と受け入れる側の2者に掛かった禁止です。

念のために書いておくと、この記事にこれから出てくる条文を全部並べても、あなた本人に課された義務は1つも出てきません。

  • 法30条(雇用安定措置)=派遣元の義務
  • 則25条・則25条の2(その手続)=派遣元の手続
  • 法35条の3(3年を超えて出さない)=派遣元への禁止
  • 法40条の2・40条の3(3年を超えて受け入れない)=派遣先への禁止
  • 法40条の5(募集を知らせる)=派遣先の義務
  • 法34条(抵触日の明示)=派遣元の義務

全部、会社側です。

あなたが何かを守れていなかった、という話は、条文の側からは1つも出てきません。

同じ作業着を着て、同じ作業をしているのに、期限があるのは自分だけ

ここからは、工場の話をします。

同じラインに、雇い方の違う人が混ざっていることがあります。 直接雇用の人、派遣の人、請負の会社から来ている人。作業着も、朝礼も、休憩の時間も同じです。

でも、隣の人が直接雇用かどうかは、なんとなく分かっていたりしませんか。

同じ作業をしていて、期限があるのは自分だけ。 そのことが、いま急に前に出てきているんじゃないでしょうか。

もう1つ、事務職の記事には出てこない話があります。住むところです。

質問サイトに、製造の現場から書き込んでいる人がいます。期間工として3年勤めて期間満了になり、いまは派遣で別の工場にいる人です。その人は、いまの状況をこう書いています。

今の住まいは派遣会社の借り上げた寮

住まいの契約がどうなっているかは、会社によって違います。だから「仕事が終わると住むところも無くなります」とは書きません。ただ、仕事の終わりが、住む場所の話でもある人がいる、というのは置いておきます。

そして、この2つは同時に来ます。日付が近づくほど、考えることが増えていきます。

派遣で働いていると、これは派遣元に言うのか派遣先に言うのかで止まりますよね。安全の教育については、そこが決まっています。

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後任の引き継ぎを、自分がやる。——その気まずさに、うまい対処法は無いと思います

2025年1月に、こう書き込んでいる人がいます。

辞めたくないのに、契約が終わることになった。新しい派遣社員が、明日から出社してくる。その人にどう接していいのか分からない。

人間関係も悪くなかった。直接雇用になれるんじゃないかと思っていた。そう書かれています。

仕事は残るんですよね。 ラインは明日も動きます。工程も、道具の置き場も、朝のやり方も、そのまま残ります。

残らないのは、自分のほうだけで。

しかも、その引き継ぎを自分がやることがあります。自分のやり方を、自分の後任に教える。

この人は、回答へのコメントで、こう書き足していました。

私は約1ヶ月間教える立場になります。教えるのが苦手で困ってます。

約1か月。 辞めることが決まっている自分が、残っていく仕事を、あとから来た人に教える。しかも、教えるのは得意ではない。

引き継ぎのやり方は現場によって違います。何も言われないまま最後の日が来る人もいます。だから「工場ではこうするものです」とは書きません。この人の場合はそうだった、というところまでです。

その気まずさに、うまい対処法は無いと思います。

「感謝を伝えて円満に」とか「またご縁があったらという姿勢で」とか、そういう助言はよく見かけます。ここでは書きません。いま必要なのは、振る舞い方の宿題ではないので。

代わりに、事実をひとつだけ置きます。

事実をひとつだけ


後任の人が来るということは、その仕事が要らなかったわけではない、ということでもあります。

要らなくなったのは仕事ではなく、「3年を超えて同じ人を置き続けること」のほうです。

励ましではありません。さっきの条文の言い換えです。

同じ3年を境に、派遣会社の側では「努めなければ」が「しなければ」に変わります

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

派遣元には、契約が終わったあとの雇用について、4つの措置が法律に並んでいます(法30条1項)。

  1. 派遣先に、直接雇用してもらえないかを頼むこと
  2. 別の就業の機会を確保して、本人に提供すること(条件が能力・経験などに照らして合理的なものに限る)
  3. 派遣元が、派遣労働者以外として期間の定めなく雇う機会を確保して、本人に提供すること
  4. 雇用の安定に特に資すると認められる教育訓練など

1年以上の見込みがある人については、これを「講ずるように努めなければならない」。つまり努力義務です。

そして、次の項がこうなっています。

2 派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して三年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者に係る前項の規定の適用については、同項中「講ずるように努めなければ」とあるのは、「講じなければ」とする。

労働者派遣法 第30条第2項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

同じ条文の中で、言葉だけが差し替わる仕掛けになっています。

3年になる見込みの人については、努力義務が義務に変わる。あなたが「終わり」と言われたその線は、派遣会社の側では、やらなければならないことが増える線でもあります。

数字のほうでも、同じ向きが出ています。厚生労働省が集計している「雇用安定措置の実績」(令和6年度)です。

措置全体3年の見込みがある人
①派遣先への直接雇用の依頼6.0%23.2%
③派遣元での無期雇用1.1%7.7%

①でいえば、約4倍です。

ただし、ここは読み方を間違えないでください。

この数字の読み方


この割合は、派遣元が「措置を講じた」と報告した件数の割合です。 直接雇用された割合ではありませんし、あなたが直接雇用される確率でもありません。 数字は令和6年度のものです。

「申し出れば直接雇用してもらえます」とは、私には書けません。 法30条は措置を講じる義務であって、結果を約束した条文ではないからです。


ここで、検索の候補によく出てくる話にも触れておきます。「派遣の3年ルールは撤廃されましたか」「廃止 いつから」というやつです。

2026年10月1日に変わるのは、待遇の説明についての決まりです(省令と告示の改正)。厚生労働省が出している改正事項の資料を通しで見ても、雇用安定措置や期間制限の話は出てきません。3年の期間制限と雇用安定措置は、法律のほうに書かれています。

「頼んでみましたが、駄目でした」で終わりにできないことになっています

ここからは、あまり解説されていない話です。省令まで降ります。

①(派遣先への直接雇用の依頼)をやって、雇われなかったとき。 そこで終わりにはできないことになっています。

施行規則には、3年見込みの人について「講じなければならない」と読み替えたうえで、こう続きます。

①の措置を講じたけれど派遣先に雇われなかったときは、②から④までのいずれかの措置を、さらに講じなければならない(則25条の2第2項)。

「頼んでみましたが、駄目でした」で、手続が終わる形にはなっていないということです。

そしてもう1つ。同じ省令の次の項が、これです。

3 派遣元事業主は、法第三十条第一項(…)の規定による措置を講ずるに当たつては、特定有期雇用派遣労働者等(…)から、当該特定有期雇用派遣労働者等が希望する当該措置の内容を聴取しなければならない。

労働者派遣法施行規則 第25条の2第3項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

「聴取しなければならない」。 努力義務ではありません。

さらに、そもそも働き続けたいのかどうかという希望については、聴くタイミングまで書かれています。派遣元が、派遣が終了する日の前日までに本人に聴くものとされています(則25条2項)。

ここで、向きが変わります。

覚えておいてほしいこと


あなたがお願いするのではありません。会社側がすることになっている手順に、あなたが答えるだけです。

もう1つだけ、正直に書いておきます。この措置の対象になる人の条件に、「終了後も継続して就業することを希望している」という要件が入っています(則25条1項)。

これは「黙っていたあなたが悪い」という話ではありません。 希望を聴くのは派遣元の側の手順です。

ただ、その手順は、あなたの希望を材料にして動くようにできている。だから、先に言っておくのは割り込みではなく、順番どおりなんです。

「終了の直前ではなく、早期に」——国の文書のほうに、そう書いてあります

終わりだけ告げられて、そのあとの話が出てこない。

その感覚について、国の文書のほうが先に書いています。派遣元の会社が何をすべきかをまとめた「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」です。

派遣元事業主は、雇用安定措置を講ずるに当たっては、当該雇用安定措置の対象となる特定有期雇用派遣労働者等の労働者派遣の終了の直前ではなく、早期に当該特定有期雇用派遣労働者等の希望する雇用安定措置の内容について聴取した上で、十分な時間的余裕をもって当該措置に着手すること。

派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省/太字は筆者)

「終了の直前ではなく、早期に」「十分な時間的余裕をもって」。

つまり、ギリギリで告げられて次の話が出てこないという状態が、ふつうのこととされているわけではありません。

ここは書き方に気をつけます。指針は告示なので、「あなたの派遣会社は違反です」とは書きません。「こうすることとされています」まで、です。

それでも、のみこめない感じを自分の側の問題として抱えていた人には、ここは知っておいてほしいところでした。

なお、この指針は対象になる人を書くときに、わざわざ「(近い将来に該当する見込みのある者を含む。)」と括弧を付けています。まだ言われていない人が読んでいるなら、この先は、いま読んでおくほうが効きます。

別の現場を出されたとしたら、それは4つのうちの2番目です

「この現場は終わりですが、別のところを紹介できます」。

そう言われた(あるいは、これから言われる)としたら、それは法律に並んでいる4つの措置の2番目にあたります。

実際、いちばん多く使われている形でもあります。3年になる見込みの人のうち、②(新たな派遣先の提供)を講じたと報告されているのが52.2%(令和6年度)。半分を超えています。

ここが、たぶん、いちばんもやもやするところだと思います。

「適当にあしらわれた」のか「2号措置を講じられた」のかは、外からは同じに見えます。

だから、どれを希望するかを先に言っておくほうが早いんです。①なのか、②なのか、③なのか。それを言っておけば、返ってきたものが自分の希望に対する答えなのかどうかが、判断できます。

③の「派遣元で期間の定めなく雇う」については、関連してこういう仕組みがあります。無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣は、期間制限の対象から外れています(法40条の2第1項1号)。同じ現場に居続けられる形が、制度としては存在するということです。

ただし、そうなれる保証はどこにもありません。 30条1項3号も「機会を確保して提供する」であって、結果の約束ではないので。「無期雇用派遣を狙いましょう」とは書きません。


もう1つ、上位の解説記事でよく見る「3か月と1日空ければリセットできる」という話にも、1つだけ触れておきます。

条文に「3か月と1日」という数字はありません。 派遣先向けの指針に「三月を超えない場合には…継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこと」と書かれていて、その裏返しが世間で言われている数字です。

そして同じ指針の同じ項目に、延長の手続を回避する目的で受け入れを続ける行為は「規定の趣旨に反するものであること」と書かれています。

違法だと書いてあるわけではありません。ただ、「リセットの方法」として説明されているものに、国の文書のほうが釘を刺しているのは事実です。

現場が変わっても、本人に交付された修了証は自分の名前で残ります。

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いまの工場で募集が出たら、あなたに知らせることになっています

派遣先の側にも、決まりがあります。

1年以上受け入れている派遣労働者がいる事業所で、そこで働く労働者の募集を行うときは、その募集の内容を、その派遣労働者に周知しなければならない(法40条の5第1項)。

掲示などの方法で、業務の内容・賃金・労働時間などを知らせる、という決まりです。

「しなければならない」=義務です。

そしてここにも、3年の線があります。

  • 1年以上のとき → 周知の対象は「通常の労働者」の募集(=いわゆる正社員の募集)
  • 3年の見込みがあるとき → 「労働者」に読み替わる(=正社員以外の募集も含むようになる)

知らせる対象が広がるということです。30条2項に続いて、3年で意味が変わる条文の2本目です。

さらに、順番についての条文もあります。1年以上同じ業務で受け入れていた人がいて、その業務に引き続き人を雇い入れようとするときは、その人を遅滞なく雇い入れるように努めなければならない(法40条の4)。

ただし、ここは自分から先に書いておきます。

  • 40条の4は「努めなければならない」=努力義務です。 「派遣先には雇う義務がある」ではありません
  • 40条の5は「募集が出たら知らせる」義務であって、「募集を出す」義務でも「採る」義務でもありません
  • どちらにも、「継続して就業することを希望する者」という要件が付いています

だから、これは結果の話ではなく、順番の話です。それでも、順番が国の決まりに書かれていること自体は、知っておいて損はないと思います。

明日できること その日付は、あなたが来る前から紙に書いてあります

ここまで条文の話をしてきましたが、今日か明日、自分ひとりでできることを1つだけ書きます。

自分ひとりでできること


契約したときにもらった紙——就業条件明示書か契約書を1枚探して、「抵触日」の欄を見る。日付は2つ書いてあるはずです。

法律には、こう書かれています。派遣元は労働者派遣をしようとするとき、あらかじめ、次のことを明示しなければならない。

三 当該派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所その他派遣就業の場所における組織単位の業務について派遣元事業主が第三十五条の三の規定に抵触することとなる最初の日
四 当該派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所その他派遣就業の場所の業務について派遣先が第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる最初の日

労働者派遣法 第34条第1項第3号・第4号(e-Gov法令検索/太字は筆者)

3号が自分の組織単位の日付、4号が事業所の日付。だから2つあります。

そして、ここが一番大事なところです。

その日付は、あなたが働き始める前から、そこに書いてあったものです。

明示は「あらかじめ」することになっているので。3年ぶんの働きぶりを見て決まった日付ではありません。

はしごにしておきます。どれを選んでも大丈夫です

やること
最小(まずはこれで十分です)今夜、契約のときにもらった封筒か、派遣元から来たメールを探すだけ。 開かなくていいです
その紙の「抵触日」の欄を見る。日付は2つ。 あわせて「組織単位」の欄も見ておく
次に派遣元から連絡が来たときに、①この現場で直接雇用してもらえないか ②別の現場を紹介してほしい ③御社で期間の定めなく雇ってほしい——のどれを希望するかを、先に言っておく

いくつか、注意を書いておきます。

明示書の様式は会社によって違います。 「抵触日」という言葉で書かれていないこともあります。だから「見れば全部わかります」とは書けません。

紙が見つからなくても、あなたが悪いわけではありません。 明示するのは派遣元の義務であって、保管はあなたの義務ではないので。

これは、あとで争うための証拠集めではありません。 あなたは明日もその現場に行きます。見るだけです。

「組織単位」については、条文が「名称のいかんを問わず」と書いています。「課」や「グループ」という名前で決まるのではない、ということです。

判定の軸は、自分の仕事の割り振りを決めていて、かつ勤怠などの労務管理も見ている人が、どこまでを見ているか(則21条の2)。

「言ったら、次を紹介してもらえないのでは」について

これ、質問サイトにも書き込まれています。要望を出すこと自体が、自分の評価を下げる行為に見えている。

ここで「不利益な取扱いは禁止されています」と一般化することは、しません。その条文は、待遇の説明を求めたときの話であって、雇用安定措置についての条文ではないからです。事実と違うことで安心させたくないので。

代わりに、位置づけだけ書きます。

希望する措置の内容を聴くところまでが、派遣元の側の手順に入っています(則25条の2第3項)。しかも、働き続けたいかどうかの希望は、派遣が終わる日の前日までに聴くものとされています(則25条2項)。

先に言っておくのは、割り込みではなく、順番どおりです。

ここから先、どうしたいかを選ぶ(3つの分かれ道)

先に書いておきます


この記事は、あなたを別の会社に移らせるために書いていません。まず、いまの派遣元に対してできることから書きます。

① この職場で働き続けたい/まだ何も言われていない

やることは1つです。派遣元に、どの措置を希望するかを先に伝える。

①この現場で直接雇用してもらえないか。②別の現場を紹介してほしい。③御社で期間の定めなく雇ってほしい。この3つのうちのどれかを、言葉にしておく。

3年の見込みがあるなら、措置を講じることは派遣元の義務です(法30条2項)。そして希望する措置の内容を聴くことも、手順に入っています(則25条の2第3項)。

お金はかかりません。誰かの許可も要りません。 電話でもメールでも、伝わればいい。

まだ何も言われていない人は、ここが一番効きます。指針が「終了の直前ではなく、早期に」と書いているとおり、時間がある側にいるので。

② 派遣ではない雇い方で、この工場で働きたい

いまの派遣先で募集が出たときに、あなたに知らせることになっています(法40条の5第2項)。3年の見込みがあるなら、知らせる対象は正社員の募集だけではありません。

同じ仕事に人を入れるなら、まずあなたを、という順番も書かれています(法40条の4)。

ただし、くり返します。40条の4は努力義務です。 「雇う義務がある」ではありません。募集が出たら知らせる義務であって、募集を出す義務でも、採る義務でもありません。

それでも、掲示や書面を気にしておくことと、①で「直接雇用を希望します」と伝えておくことは、両方ともあなたの側でできます。

③ 次の現場を探す

先に書いておきます。この場合でも、まず、いまの派遣元に②の措置(新たな就業機会の提供)を求めるのが先です。 それが派遣元の手続に入っているので、使わない手はありません。

そのうえで、外の求人も見ておきたい、というときの話をします。

いま1社しか知らない状態だと、出された条件が良いのか悪いのかを判断できません。 比べる相手がいないので。「そういうものか」と思うしかなくなるのは、そこが原因のこともあります。

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正直なところも書いておきます。登録すれば連絡は来ます。 交替勤務だと、その電話がしんどい時間に鳴ることもあります。寮つきの求人も、条件は会社ごとにばらばらです。「見るだけ」で使うなら、それでいいと思います。

そして、比べてみて「今の派遣元のほうがマシだな」と思えたなら、それはそれで収穫です。

それでも決まりが動かないと感じたときの窓口

ここまで書いてきたことをやっても、どうにも話が進まない、という場合もあると思います。

そのときのために、公的な相談窓口の名前だけ置いておきます。各都道府県の労働局や労働基準監督署に置かれている「総合労働相談コーナー」です。無料で相談できます。

「相談しましょう」とは書きません。あなたは明日もその現場に行って、引き継ぎをするので。 名前だけ、置いておきます。

その日付は、あなたが来る前から、そこに書いてありました

長くなったので、まとめます。

この記事のまとめ

  • 「3年を超えて同じ人を出してはいけない」という禁止は、派遣元と派遣先に掛かっています(法35条の3・法40条の3)。あなたには掛かっていません
  • 同じ3年を境に、派遣元では「努めなければ」が「しなければ」に変わります(法30条2項)
  • ①を頼んで雇われなかったときは、②〜④のいずれかをさらに講じなければならないことになっています(則25条の2第2項)。「駄目でした」で手続は終わりません
  • 希望する措置の内容を聴くところまでが、派遣元の手順です(則25条の2第3項)。働き続けたいかどうかは、終わる日の前日までに聴くものとされています(則25条2項)。だから、先に言うのは割り込みではありません
  • 「終了の直前ではなく、早期に」と、国の文書のほうに書いてあります(派遣元指針)
  • 募集が出たら知らせることになっています(法40条の5)。ただし雇う義務ではありません(法40条の4は努力義務)
  • 明日できることは1つ。契約の紙を1枚探して、「抵触日」の欄を見る。日付は2つあります

最後に、もう一度だけ。

その日付は、あなたが来る前から、そこに書いてありました。3年ぶんの仕事は、そのあとに乗ったものです。

決まりが動かないのは、たしかにそのとおりです。ただ、決まりが掛かっているのは、あなたではありません。

明日、どんな顔でその現場に行けばいいか分からない夜は、こちらです。

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この記事の出典


・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第26条・第30条・第34条・第35条の3・第40条の2・第40条の3・第40条の4・第40条の5|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第20号)第21条の2・第25条・第25条の2|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50002000020

・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号/最終改正 令和8年厚生労働省告示第200号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005660&dataType=0&pageNo=1

・派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号/最終改正 令和8年厚生労働省告示第201号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005670&dataType=0&pageNo=1

・雇用安定措置の実績(令和6年度)|厚生労働省(資料出所:労働者派遣事業報告(令和6年度))
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001474101.pdf

・派遣労働者の同一労働同一賃金について(令和8年10月1日改正)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

・労働者派遣法施行規則・派遣元指針・派遣先指針の主な改正事項(施行・適用期日 令和8年10月1日)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001696901.pdf

・総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

・Yahoo!知恵袋「派遣3年ルールって結局誰の得になっているんでしょうか」https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13266212323

・Yahoo!知恵袋「3年経ったらやはり終了と言われましたか」https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11263745476

・Yahoo!知恵袋(3年の契約満了。直接雇用を希望したが断られた)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12282447087

・Yahoo!知恵袋(期間工3年満了ののち派遣へ。借り上げ寮について)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14281877579

・Yahoo!知恵袋(辞めたくないのに後任が出社してくる)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14308972139

・Yahoo!知恵袋(希望を言うと次を紹介してもらえないのではという不安)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13306594318

・Yahoo!知恵袋(部署名が変わり、抵触日がまた3年になった)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11141519086

・Yahoo!知恵袋(満了の前に、派遣会社から連絡は来るのか)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11294181101

※法令の条文は著作権法第13条により著作権の対象外のため、そのまま引用しています。
※法令・指針・統計・窓口の情報は、いずれも2026年9月4日〜5日時点で確認したものです。最新の情報は各ページでご確認ください。
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アヴァン

はじめまして、アヴァンです。電子部品系の工場で働く、現役の製造業ワーカーです。ミスが怖い夜、辞めたくなる朝、なかなか覚えられなくて落ち込む日——現場で私自身がつまずいたことや、そこで見つけた小さなコツを、同じ目線で書いています。えらそうに教える場所ではなく、あなたが明日もうちょっと楽になるための「保健室」でありたいと思っています。

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