答えのほうから書きます。
この記事の結論
言葉がうまく通じない方と同じ作業をしていて、いちばんしんどいのは、ふだんのやりとりよりも、何か問題が起きたあとかもしれません。その場にいた自分しか経緯を話せず、話すほど相手のことばかりになっていく。そして、相手の方の言い分は、どこにも残らない。
いちばんしんどいのは、言葉が通じないことより「何か起きたあと」でした
うまく通じない状況が毎日続くと、疲れますよね。それは、そのとおりだと思います。
私のことを、先に書いておきます。
日本語でのやりとりが難しい方と、同じ作業をしています。立場は私のほうが上です。でも、私が教えることもあれば、教わることもあります。それでも、言葉はうまく通じません。
ふだんは、身振り手振りで伝えたり、ほかの人に伝えてもらったりしています。
先に書いておくと、この記事に伝え方の話は出てきません。 身振り手振りも、人に頼むのも、たぶん、あなたももうやっていると思うので。
私がいちばん困るのは、ふだんのやりとりではありません。何か問題が起きたときに、相手の方が何を言っているのか、私には分からないことです。
ふだんの疲れと、起きたあとのしんどさは、つながっているのかもしれません。ただ、私の場合、重さの芯は、起きたあとのほうにありました。
その場にいたのが自分なら、経緯を話せるのは自分しかいません
問題が起きたとき、その場にいたのが私なら、ほかの人が知らないことを知っているのは、私だけです。
だから、伝えるしかない、と思っています。
話したいから話すのではありません。黙っている、という選択肢が、そもそも無いんです。
そして、相手の方があの場のことをどう話しているのか、私には分かりません。そうなると、周りに経緯を話す役は、本当に私ひとりに来ます。
起きたその場で、止めるか、呼ぶか、待つか——の話は、こちらに書きました。
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話しているうちに、相手のことばかりになっていきます
起きたことを、順番に話そうとします。
すると、「相手の方が、こうして」「そのとき、相手の方が」と、相手のことばかりになっていきます。 起きたことをそのまま話しているだけなのに、形としては、相手を悪く言っているのと同じになってしまう。
相手のことばかり悪く言う形になるのが、しんどいんです。
しかも、しんどさはそこで終わりません。
同じ作業をしていたのは、私です。立場も、私のほうが上です。 だから、相手のしたことを話せば話すほど、こう思ってしまいます。「ちゃんと伝えていなかったのでは」「管理はどうなっていたのか」。こちらが悪い、と受け取られるかもしれない、と。
実際にそう言われるかどうかは、分かりません。でも、そう受け取られるかもしれない、と思うだけで、話す口は重くなります。

この話は、誰にも相談していません。人の悪口に聞こえるので。人の悪口は、よくないと思っているので。
人の作業を見て、言うかどうか・何と言うかの手前で止まる話は、別の記事に書きました。
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相手の方の言い分は、どこにも残りませんでした
それから、もう1つあります。
私が経緯を説明したあと、相手の方の話を、相手の言葉が分かる人が聞く、という流れはありませんでした。
これは、私の職場で、私が見た範囲の話です。ほかの職場がどうなのかは、分かりません。
ただ、少なくとも私の場合は、あの場のことを話したのは、私だけでした。
相手の方が何を思っていたのか、何と言いたかったのか。それは、どこにも残らないまま、話が進んでいきます。
だから、もし私が相手の方の分まで、自分の想像で埋めて話したら——それが、そのまま相手の方の言い分として残ってしまう。 このことは、あとでもう一度書きます。
言葉が伝わりにくい理由は、1つではないと書かれた国の資料があります
ここで少しだけ、国の資料の話をします。
相手の人を原因にしないで話すための足場として、紹介します。 誰かを責める材料として出すのではありません。
「労働者の国籍にかかわらず」安全衛生の法律は適用されます
国が定めた指針に、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」というものがあります。労働施策総合推進法の8条に基づいて、厚生労働大臣が定めたものです。2026年5月29日に改正され、6月14日から順に適用されています。
この指針の「基本的考え方」に、こう書かれています。
労働者の国籍にかかわらず、〔中略〕労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、〔中略〕等の労働関係法令及び社会保険関係法令は適用されるもの
外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針 第二(厚生労働省・令和8年6月14日改正後全文)
安全や衛生のための決まりは、誰が働いていても同じように当てはまる、ということです。
「理解できる方法で」教育することは、事業主に向けて書かれています
同じ指針の「安全衛生の確保」には、次の2つが並んでいます。
事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより外国人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。
同指針 第四の三1
事業主は、外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語及び基本的な合図等を習得させるよう努めること。
同指針 第四の三2
1つめは「行うこと」、2つめは「努めること」と、書き方が違います。 なので、まとめて「会社の義務です」とは書けません。ちなみに、ここでいう「母国語等」には、指針の中の定義で、平易な日本語も含まれています。
そして、この2つが向けられている相手は「事業主」です。 同じ作業をしている同僚や先輩を名宛人にした項目は、この指針の中にはありませんでした。
ただ、片側だけを書くのは違うので、もう1つ書きます。厚生労働省の通達(平成31年3月28日 基発0328第28号)には、安全衛生教育の実施責任者の管理の下で、相手と同じ言葉を話せて、日本語も上手な上司や先輩などに、通訳や補助の役を頼んで行うのが望ましい、とも書かれています。職場の人が間に入る形も、想定されているということです。 だから「職場の人には関係のない、会社だけの話です」とも、私は書けません。
もう1つの資料
厚生労働省の委託事業で作られ、同省のサイトに載っている「外国人労働者安全衛生管理の手引き」の「はじめに」には、コミュニケーションがうまくいかない要因は、働く人の日本語だけではなく、雇う側の接し方が十分でないことや、教育のやり方・体制が整っていないことも一因と考えられる、という見方が示されています。
言葉が伝わりにくい理由は、1つではない。相手の人のせいとも、隣で同じ作業をしている人のせいとも、この資料は書いていません。
会社がそういう資料や、間に立つ人を用意していたかどうか。それは、私は覚えていません。
ここは正直に書きます
だからといって、あの場で私が話したことが、悪口に聞こえなくなるわけではありません。 資料にそう書いてあっても、その場の受け取られ方は変わらないと思います。管理のことを言われたらどうするか、の答えも、私は持っていません。
報告書の書き方も、うまい言い方も、この記事にはありません
ここで、書かないことを先に書いておきます。
この記事は、起きたあとに、口で経緯を話す場面の話までです。それが書類になってからの話や、「うまく伝わる言い方」は、ここには出てきません。
この記事を読んでも、次に何か起きたとき、話すしかないことは変わりません。そこは、ごまかさずに書いておきます。
話したことが書類になったあとの話は、こちらに書きました。
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次に話すときは、相手の方の分を、自分の想像で埋めない
そのうえで、私が置いていけるのは、1つだけです。
次に経緯を話すとき、相手の方が何を考えていたか、何と言っていたかを、自分の想像で埋めない。分からなかったところは「そこは、私には分かりませんでした」と、空けたまま話す。
時間は、かかりません。誰の手も借りません。どうせ話す場面の中の、1文だけです。
正直に書くと、私もまだ、これを言ったことはありません。次に話すときは、そうしようと思っています。
先に、気になるところを書いておきます。
「分からなかった」と言うと、「伝わっていなかったのか」と思われるかもしれない。そう感じる方もいると思います。 立場が上だと、なおさらかもしれません。
埋めると、それが相手の言い分として残ってしまうから
それでも埋めないほうがいい、と私が思う理由は、さっき書いたことです。
私の職場では、相手の方の話を、相手の言葉で聞く流れはありませんでした。 だから、私が相手の方の気持ちや理由を想像で話すと、それが、そのまま相手の方の言い分として残ってしまいます。
分からないところを分からないと言うのは、相手をかばうためでも、自分を守るためでもありません。分からないことを、分かったことにしないためです。
例:言えるのは「私が見ていたところまで」
うまい言い方ではなく、分からないところを空けたまま話す例を、1つだけ置いておきます。
「私が見ていたのは、ここまでです。そのとき何と言っていたのかは、私には分かりませんでした。」
これで伝わる、責められずに済む、とは書けません。
変わるのは、相手の方の分まで、自分の言葉で埋めて話すかどうか、そこだけです。
話したのは、その場にいたのが自分だったから
長くなったので、まとめます。
- しんどいのは、言葉が通じないことそのものより、何か問題が起きたあとかもしれません
- その場にいたのが自分なら、経緯を話せるのは自分しかいません。 黙るという選択肢は、もともと無い
- 話すほど相手のことばかりになり、それが、同じ作業をしていた立場が上の自分に返ってくるかもしれない。私がしんどかったのは、そこでした
- 私の職場では、相手の方の言い分を、相手の言葉で聞く流れはありませんでした
- 国の指針は、「理解できる方法で」教育することを事業主に向けて書いています。 1つめは「行うこと」、2つめは「努めること」。相手と同じ言葉を話せて、日本語も上手な上司や先輩に補助を頼む形も、通達では望ましいとされています
- 明日できることは1つだけ。相手の方の分を、自分の想像で埋めない
最後に、私のことを書いて終わります。
次に何か起きたときも、たぶん、私が話すことになると思います。その場にいるのが私なら。
相手のことを悪く言わずに済む話し方を、私が持っているわけではありません。ただ、相手の方が何と言っていたか分からなかったところは、分からなかったと言おうと思っています。そこを自分の言葉で埋めないことだけは、私の手でできるので。
話したのは、その場にいたのが自分だったからです。
起きたことに、自分が関わっていたかもしれないときの話は、こちらに書きました。
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この記事の出典
・外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(令和8年6月14日改正後全文)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001707230.pdf
・外国人の雇用(指針の改正後全文の掲載ページ)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page11.html
・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第8条|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
・外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について(平成31年3月28日 基発0328第28号)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000571530.pdf
・外国人労働者安全衛生管理の手引き【全体版】(令和4年度厚生労働省委託事業/令和5年3月)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001124694.pdf
※リンクを付した5件のURLは、いずれも2026年9月16日に閲覧して確認したものです。