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有給、残ってますよね。
でも、言い出せない。
私もそうです。理由ははっきりしていて、自分が休んだら、残った人が大変になるのが分かっているからです。
ラインが動いている以上、誰かが穴を埋めます。その日だけ人が減って、その分の作業がどこかに乗る。それを見てきたから、「明日休みます」がなかなか言えない。
しかも、まわりを見ると有給をほとんど取らない先輩や上司がいたりする。そういう人が「仕事に熱心」「真面目」と見られている職場だと、もう完成です。申請しにくい環境の完成。
先に結論を書きます。
その申し訳なさは、気のせいじゃないです。 実際に誰かの負担にはなります。そこは嘘をつきません。
ただ、「有給を取らないほうが会社のためになる」というのは、少なくとも制度の上では逆です。
労働基準法39条には、年5日の有給休暇は、会社が取得させなければならないと書かれています。あなたの権利であると同時に、会社の義務なんです。
この記事では、条文に実際に何が書いてあるのかと、申請するときに使える言い方を書きます。
まず結論:有給に理由は要らないし、「年5日」は会社の義務です
大事なところを2つだけ、先に出します。
① 「請求する時季に与えなければならない」
労働基準法39条5項です。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
労働基準法 第39条5項
「労働者の請求する時季に」と書いてあります。そして条文のどこにも、取得の理由を条件にする文言はありません。
「私用です」で足りるのは、そういうことです。
② 年5日は、会社が取得させる義務
39条7項です。少し長いので要点だけ言うと、有給が10労働日以上もらえる人については、そのうち5日は、会社が時季を決めて与えなければならないという内容です。
ここが感覚と逆かもしれません
あなたが1日も取らないまま1年が過ぎると、困るのは会社です。
年5日は「取ってもいいもの」ではなく、会社が取得させなければならないものとして定められています。
「休むと残された人が大変」— これ、気のせいじゃないです
権利の話をする記事は山ほどあります。でも、そのほとんどがこの一点を飛ばしていると思っていて。
あなたが休むと、実際に誰かが大変になります。
- ラインなら、その工程を誰かが持つ
- 交替勤務なら、頭数が減った分の作業がそのまま残る
- 「忙しい日」に休むと、露骨に空気が変わる
これを「気にしすぎ」と言われても、納得できないですよね。実際に起きていることなので。
だから、まずそこは認めます。あなたの罪悪感は、まわりをちゃんと見ているから出ています。 図々しい人は、そもそもこの記事を読んでいません。
そのうえで、この記事はこう考えます。
問題の置きどころ
問題は「あなたが休むこと」ではなくて、
「1人休んだだけで回らない人員でシフトが組まれていること」のほうです。
これは、あなたが我慢して埋める話ではないと思うんです。
そもそも、何日もらえることになっているのか
自分の残日数を把握していない人、けっこう多いです。条文で確認しておきます。
39条1項:雇い入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に、10労働日の有給休暇を与えなければならない。
39条2項:そこから継続勤務1年ごとに加算されます。条文の表を足していくと、こうなります。
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以降 | 20日 |
39条3項:週の所定労働日数が少ない人(パート・アルバイトなど)は、日数に応じた比例付与になります。日数は少なくなりますが、ゼロではありません。
そして、使わなかった分は2年で消えます
労働基準法115条は、賃金以外の請求権について「二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する」と定めています。年次有給休暇の請求権もこれに当たると解されていて、実務上は「付与から2年で消える」と言われます。
つまり、繰り越せるのは基本的に1年分です。「いつか使おう」で置いておくと、古いほうから静かに消えていきます。
まずは自分が何日持っているか、給与明細か勤怠システムで確認してみてください。話はそこからです。
知らないうちに有給が減っている?「計画年休」のこと
「そんなに休んでいないのに、残日数が思ったより少ない」
心当たりがある人は、計画年休かもしれません。
労働基準法39条6項には、労使協定(会社と、労働者の過半数を代表する人などとの書面による取り決め)を結んだ場合、有給を与える時季をあらかじめ決めておくことができると書かれています。
工場だと、お盆や年末年始の一斉休業に有給が充てられているケースがよくあります。「休みが多い会社だな」と思っていたら、自分の有給が使われていた、というやつです。
これ自体は悪いことではありません。まとまった休みを確保するための仕組みでもあります。ただ、知らないままだと「気づいたら残っていない」ということになります。
そして、ここが大事なところです。
計画年休にできるのは「5日を超える部分」だけ
条文にはっきり「五日を超える部分については」と書かれています。
つまり、最低5日は、あなたが自分で日を決められる分として残るということです。
「全部会社に決められていて、自分では1日も選べない」というのは、制度上は想定されていません。
自分の職場がどうなっているかは、就業規則か、労使協定の内容で確認できます。分からなければ、総務や職長に「うちは計画年休ってありますか」と聞くだけでも分かります。
会社の「時季変更権」は、拒否権ではありません
「繁忙期だから駄目」と言われたことがある人へ。
さっきの39条5項のただし書きをもう一度見てください。
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
「与えなくてよい」とは書いていません。「他の時季に与える」と書いてあります。
つまりこれは、日をずらす権利であって、有給を消す権利ではないということです。
だから、断られたときに聞くべきことは決まっています。
「じゃあ、いつなら大丈夫ですか」
これは食い下がっているのではなく、条文が想定している流れそのものです。
ただし、断定はしません
何が「事業の正常な運営を妨げる」に当たるかは、職場の状況によって個別に判断される話です。「うちのは違法だ」と決めつけるのはおすすめしません。日をずらす相談に持ち込むのが、いちばん現実的です。
「取らない先輩=真面目」に見えるけど、制度上はむしろ逆です
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。
有給をほとんど取らない先輩がいる。上司も取らない。その姿が「仕事に熱心」「責任感がある」と評価されている。
そうなると、後から入った人は詰みます。自分が申請した瞬間に、その基準で見られることになるので。
でも、制度の側から見ると、この見え方は逆なんです。
- 年5日を取得させるのは、会社の義務(39条7項)
- 守らなかった場合の罰則も定められています(労基法120条1号)
取っていない人がいる状態は、会社にとって"良い状態"ではありません。
つまり、あなたが有給を取るのは、わがままでも甘えでもなくて、会社が果たすべき義務のほうを片付けているという見方もできるわけです。
ここで大事なことを2つ書いておきます。
この2つは守ってください
① 取らない先輩を、責める話にはしないでください。
その人も、たぶん同じ空気の中でそうなっただけです。「あの人が取らないせいで」と考え始めると、しんどくなるのは自分のほうです。レッテルは誰かの悪意ではなく、空気が勝手に作ったものだと思っています。
② 罰則を職場で振りかざさないでください。
「取らせないと会社が罰金ですよ」と言った瞬間に、話は「権利の主張」になって、あなたの立場が悪くなります。これは知識として自分の中に置いておくものであって、武器として抜くものではないです。
知っているのと知らないのとでは、申請するときの気持ちがまるで違います。それで十分だと思います。
「みんながやっているから」で自分の行動を決めない、という話は、別の記事にも書きました。
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有給を取ったことで、不利益な扱いをしてはいけない
労働基準法136条には、こう書かれています。
使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
労働基準法 第136条
「有給を使うと皆勤手当が消える」「査定で下がる」といった話を聞いたことがある人もいると思います。そういう扱いをしないように、と条文に書かれているということです。
※この条文の法的な効き方については、専門家の間でも整理の仕方に幅があります。ここでは「そう書かれている」以上のことは書きません。実際に不利益な扱いを受けている場合は、下に書く相談先で聞いてみてください。
申請するときの言い方(3点セット)
言い方だけで通るわけではないですが、言い方で角が立たなくなるのは確かです。 3つあります。
① 相談ではなく、予定として言う
言い方を変えるだけで、話が「調整」になる
✕「もし可能だったら、有給って取れたりしますか……?」
◯「◯月◯日、有給いただきたいんですが」
前者は「駄目」と言いやすい形です。後者は予定の報告なので、話が「日程の調整」に移ります。
② 穴が埋まる形を添える
- 「その日の◯◯は前日までに終わらせておきます」
- 「◯◯さんに引き継いでおきます」
これは媚びではなくて、さっき書いた「実際に誰かが大変になる」への具体的な答えです。罪悪感を、段取りに変換するというほうが近いです。
③ 早めに出す
人の手配ができる時期に出すほど通ります。当日や前日だと、断られる理由を自分で作ることになります。
理由を聞かれたら
「私用です」で足ります。 条文に理由の定めはありません。
言いたければ言えばいいし、言いたくなければ言わなくていい。ただ、現場の空気として、「通院」「家の用事」くらいは添えたほうがスムーズなことも多いです。そこは正直に、あなたの職場に合わせてください。
言いにくいことを言うときの型は、こちらにもまとめています。
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それでも一切取れない、取ったら嫌味を言われる職場なら
言い方を変えても、段取りをしても、まったく取らせてもらえない。取ったら明らかに態度が変わる。
そういう場合は、社内だけで抱えなくていいです。
まず話を聞いてもらえる場所
総合労働相談コーナー(厚生労働省)
都道府県労働局や労働基準監督署の中など、全国378か所に設置されています。
・利用は無料
・予約不要
・専門の相談員が面談または電話で対応
「訴える」ための場所ではなくて、まず話を聞いてもらう場所です。自分の状況が普通なのかどうかを確認するだけでも意味があります。
嫌味を言われる、空気が悪くなる、というつらさそのものについては、こちらにも書いています。
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「有給が普通に取れる工場」は、実際にあります
ここまで読んで、「うちは何をやっても無理だ」と思った人もいると思います。
はっきり書いておくと、有給の取りやすさは、工場によって本当に差があります。 シフトに余裕があるところ、計画年休で最初から休みが組まれているところ、申請が形式的に通るところ。同じ製造業でも別物です。
今すぐ辞めろという話ではありません。ただ、「他がどうなっているか」を知らないまま我慢し続けるのは、もったいないと思います。
※今すぐ動かなくても大丈夫です。「うちが普通じゃないかもしれない」と気づけるだけでも、だいぶ違います。
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よくある質問
有給の理由を聞かれたら、答えないといけませんか?
条文に理由の定めはありません。「私用です」で足ります。ただ、答えたくない理由をわざわざ説明すると角が立つことがあるので、短く言い切るのがいちばん揉めません。
当日の朝に「今日は有給で」は使えますか?
会社のルール次第です。事後の振替を認めている職場は多いですが、制度上は事前の請求が前提なので、確実なのは前もって出すことです。
「繁忙期だから駄目」と言われました。違法ですか?
その一言だけでは判断できません。会社には日をずらしてもらう権利(時季変更権)がありますが、それは別の日に与えるための権利です。まずは「いつなら大丈夫ですか」と聞いてみてください。
パートですが、有給はありますか?
週の所定労働日数に応じて比例付与されます(39条3項)。日数は正社員より少なくなりますが、ゼロではありません。
辞めるときに残った有給は使えますか?
退職時の有給消化は、この記事の範囲を超えるので詳しくは別記事に書いています。ただ、残っている有給が自動的に消えるわけではないので、辞めると決めたら早めに残日数を確認してください。
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まとめ
この記事のまとめ
・有給に理由は要らない。 条文は「労働者の請求する時季に与えなければならない」(39条5項)
・「休むと残った人が大変」は気のせいじゃない。 そこは認めていい。ただし、1人休んだら回らない人員のほうが問題
・年5日は会社の義務(39条7項)。取らない状態が続くと困るのは会社のほう
・時季変更権は拒否権ではない。 断られたら「いつなら大丈夫ですか」
・言い方は3点セット(予定として言う/穴が埋まる形を添える/早めに出す)
・一切取れないなら、総合労働相談コーナー(無料・予約不要)
最後に、正直なところを書きます。
本当は、個人ががんばって空気を破る話ではないと思っています。 安心してみんなが有給を取れる職場をつくるのは、会社の側の仕事です。
ただ、それを待っている間にも、あなたの有給には期限があります。
だから、まずは1日です。いちばん申請しやすい日を1日だけ選んで、「◯日、有給いただきたいんですが」と言ってみてください。 それが通ったら、次はもう少し楽になります。


この記事の出典
・労働基準法(昭和22年法律第49号)第39条・第115条・第120条・第136条|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
・総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
※法令・相談窓口の情報はいずれも2026年8月20日時点のものです。個別の判断については、職場の担当者、または総合労働相談コーナー・所轄の労働基準監督署にご確認ください。