現場のコツ・あるある

危険な作業に線を引いているのは、人ではなく作業のほうでした——「派遣の人に任せていいのか」で止まる日に

先に、いちばん知りたいところに答えます。

この記事の結論


その作業を任せていいかどうかは、雇用形態では決まりません。決まるのは、作業のほうです。
目次
  1. 「これ、この人に任せていいのか」——決めているのは、雇用形態ではありません
  2. 線は、「その作業に、免許か特別教育が要るか」のほうに引かれています
  3. そして、その教育を用意する義務は、派遣先の側にあります
    1. 決め手は「もまた」という3文字です
  4. 教育しないまま働かせる条件なら、そもそも派遣してはいけないことになっています
  5. もう1本の線は、「それが契約に書いてある業務の中か」
  6. 片方は人を見ていて、もう片方は紙を見ていました
  7. 品質のほうには、法令の線がありません
  8. 品質のほうにも、線はありました。法令ではなく、「会社の認定」という名前で
  9. 法令の線と、会社の認定の線。どちらも作業に付いていて、私はどちらでも人を見ていました
  10. 法律のほうが先に、「責任の重さ」と雇用形態を切り離しています
  11. 誰かに聞ければ、いちばん早いです。でも、聞く相手がいないことがあります
  12. 明日できること 振る前に、人ではなく作業のほうを先に見る
    1. 最小(まずは、これだけで十分です)
    2. もう一歩やれる日は——就業条件が書かれたものを探してみる
    3. 品質の作業で迷ったときは——その作業が、どの認定の範囲かを探してみる
    4. 自分でやると決めたときも、同じ線がかかります
    5. 見て分からなかったら——その場で、自分ひとりで決めない
  13. 線を引いていたのは、あなたの気の使い方ではありませんでした

「これ、この人に任せていいのか」——決めているのは、雇用形態ではありません

朝、人数が1人足りない日があります。

残った作業のうち1つが、手を挟みうる作業だったり、最終の確認工程だったりする。その場にいるのは、先月から来ている人。同じ作業着で、同じ朝礼に出ています。でも直接雇用ではない、と前に聞いた。

「…お願いします」と言おうとして、一拍あく。

私も、毎回ここで止まります。危ない作業や、品質に大きく響く作業を誰に振るか。相手が直接雇用でないと知っていると、なぜか手が止まります。

この迷いを、職場の誰かに相談したことは一度もありません。聞く相手が、いないので。

そして結局、自分でやります。


先に、この記事の立ち位置を書いておきます。

この記事の立ち位置


この記事は、振る側と、振られる側と、どちらが読んでも同じところに着きます。というより、着かないと意味がないと思っています。

それから、たぶんもう見たであろう話を、1つ片付けておきます。

派遣で行ってはいけない業務というものは、たしかにあります。港湾、建設、警備、それと医療の一部です。製造の現場で毎日出てくる作業には、ほとんど関係がありません。 ——たぶん、それはもう見て、自分の話ではないと分かってここに来ていると思います。

もう1つだけ。先に書いておくと、この記事に「上司に相談してみましょう」は出てきません。

ここから先は、条文の話です。「その作業のほう」に、どんな線が引かれているのかを確かめていきます。

線は、「その作業に、免許か特別教育が要るか」のほうに引かれています

法律が引いている線は、雇用形態のところではありません。その作業に、免許や資格、あるいは特別な教育が要るかどうかのところに引かれています。

労働安全衛生法の61条1項に、こう書かれています。

事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、…免許を受けた者又は…技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない

労働安全衛生法 第61条第1項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

「就かせてはならない」。ここに雇用形態は出てきません。資格が要る作業に、資格が無い人を就かせてはいけない。それだけです。

もう1本、同じ法律の59条3項があります。

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

労働安全衛生法 第59条第3項(e-Gov法令検索)

これも同じで、先に教育をしてから就かせるという順番の話です。誰を雇っているか、という話ではありません。

だから、こう聞き直すことができます。

聞き直すと、こうなります


その作業、資格や特別教育が要る作業でしたか。それとも、要らない作業でしたか。

要る作業なら、雇用形態を考える必要がそもそもありません。受けていない人は、直接雇用でも派遣でも、その作業に就けないので。

要らない作業なら、雇用形態で迷う理由がありません。

どちらに転んでも、「人を見て決める」場面が消えます。これが1本目の線です。

どの作業に特別教育が要るのか、そして受けていなかったらどうするのかは、こちらに書きました。

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そして、その教育を用意する義務は、派遣先の側にあります

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

特別教育をする義務は、派遣で働いてもらっている場合、派遣先の側にあります。派遣会社(派遣元)ではありません。

言葉の整理だけしておくと、派遣元=その人を雇っている派遣会社。派遣先=あなたが働いている側の会社です。

根拠は労働者派遣法の45条です。3項に、こう書かれています。

労働者がその事業における派遣就業のために派遣されている派遣先の事業に関しては、当該派遣先の事業を行う者を当該派遣中の労働者を使用する事業者と、当該派遣中の労働者を当該派遣先の事業を行う者に使用される労働者とみなして、労働安全衛生法…第五十九条第三項第六十条第六十一条第一項…の規定…を適用する。

労働者派遣法 第45条第3項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

(※「…」は中略です)

さっき出てきた59条3項(特別教育)と61条1項(免許・技能講習)が、両方ともこのリストに入っています。派遣先を「事業者」とみなして、この2つを適用すると書いてある。

そして、同じ条文の5項がこう打ち消します。

その事業に使用する労働者が…派遣元の事業に関する第三項前段に掲げる規定…の適用については、当該派遣元の事業の事業者は当該派遣中の労働者を使用しないものとみなす。

労働者派遣法 第45条第5項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

派遣元のほうは「そもそもこの人を使っていない事業者」として扱われる、という意味です。だから特別教育の義務は、派遣元には残りません。

決め手は「もまた」という3文字です

同じ45条の1項にも、よく似た書き方が出てきます。でも、こちらは言い方が違います。

45条1項45条3項
条文の言い方派遣先もまた事業者とみなす派遣先事業者とみなす(「もまた」が無い)
5項の打ち消しかからないかかる
結果派遣元と派遣先の双方派遣先のみ

「もまた」が付いていれば双方、付いていなければ派遣先だけ。この3文字の有無で、誰の義務かが決まっています。

だから、こう言えます。


教育が要る作業なら、その教育を用意することになっているのは、あなたの側の会社です。

ここで大事なのは、義務を負っているのは「事業者」=会社であって、あなた個人ではないということです。あなたが教育をしなければならない、という話ではありません。

そして念のため書いておくと、派遣元が安全衛生に何もしなくていい、という意味でもありません。雇い入れたときの教育は派遣元、作業内容を変えたときの教育は双方——というふうに、条文は分かれています。

ここまでで、1つはっきりすることがあります。

「危ないから、派遣の人には任せない」は、法律の答えではありません。法律が用意しているのは「危ない作業なら、教育をしてから就いてもらう。その教育は派遣先が用意する」のほうです。

技能講習なら修了証、免許なら免許証。どちらも本人に交付されます。会社に言われて取ったものでも、そこから先は、その人のものとして残ります。

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教育しないまま働かせる条件なら、そもそも派遣してはいけないことになっています

もう1つ、驚いた条文があります。派遣法45条の6項です。

派遣元の事業の事業者は、労働者派遣をする場合であつて、…労働者派遣契約に定める派遣就業の条件に従つて当該労働者派遣に係る派遣労働者を労働させたならば、…労働安全衛生法第五十九条第三項、第六十一条第一項…の規定…に抵触することとなるときにおいては、当該労働者派遣をしてはならない。

労働者派遣法 第45条第6項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

読み下すと、こうなります。


その契約のとおりに働かせたら、特別教育や資格の決まりに引っかかることになる。——そういう条件の派遣は、そもそもしてはいけない。

さらに7項で、それに違反して派遣し、実際に引っかかった場合は、派遣元の側が安全衛生法に違反したものとみなされるところまで書かれています。

つまり、あなたが朝そこで気づく前に、契約の段階で止まることになっている話なんです。

これは「あなたの会社は違反しています」という話ではありませんし、「派遣会社が悪い」という話でもありません。あの一拍の重さを、あなた一人が背負う構造にはなっていない、ということです。

もう1本の線は、「それが契約に書いてある業務の中か」

資格が要らない作業だったとき、線はもう1本あります。

その作業が、労働者派遣契約に定めた「業務の内容」の中に入っているかどうかです。

派遣法26条1項は、労働者派遣契約に定めるべき事項を並べていて、その1号が「派遣労働者が従事する業務の内容」です。

そして39条に、こう書かれています。

派遣先は、第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければならない。

労働者派遣法 第39条(e-Gov法令検索/太字は筆者)

さらに、国が出している「派遣先が講ずべき措置に関する指針」という告示があります。その中に、こういう項目があります。

派遣労働者を直接指揮命令する者に対し、労働者派遣契約の内容に違反することとなる業務上の指示を行わないようにすること等の指導を徹底すること。

派遣先が講ずべき措置に関する指針 第二の二(厚生労働省/太字は筆者)

これは告示なので、「違反です」という言い方ではなく、そうすることとされています、という受け止め方になります。

それでも、向きは変わります。

「契約の外の作業を頼んでいいのか」と自分で悩む話ではなく、「契約の外の指示をしないように」と、指導することになっている側の話です。

ここは正直に書きます


ここで1つだけ線を引いておきます。「契約書に書いていない業務をさせるのは違法です」と、この記事では判定しません。それは条文が決めることで、個別の契約が法令に合っているかどうかを、私が言える立場ではないので。書けるのは、条文にこう書いてある、というところまでです。

片方は人を見ていて、もう片方は紙を見ていました

ここで一度、頼まれる側の話をします。

質問サイトに、こういう投稿があります。振る側の人が書いたものです。

「派遣社員の人と話していると、兎に角自分は責任は負わないし抱え込まないという人を見かけます。」

正直に書くと、この投稿の温度に私は同調しません。これは不満の形をしていて、この記事の答えとは向きが違うので。ここで引いているのは、同じ迷いが実在しているという証拠としてだけです。

面白いのは、この投稿に付いたベストアンサーのほうです。派遣で働いている側の人が、こう返しています。

「契約書に記載されている業務以外をする事は違法になります」

質問と答えが、噛み合っているようで噛み合っていません。片方は「この人に頼んでいいのか」と人を見ていて、もう片方は「これは契約に書いてあるのか」と紙を見ている。

だから、聞いても答えても、話が合わない。

法律が見ているのは、そのどちらでもなく——まず作業のほうです。

そして、その作業を見たあとで、紙(契約に定めた業務の内容)を見る。順番はそっちです。

もう1つ、正直に書いておきます。

2005年、2014年、2020年、2023年。18年ぶん離れた投稿に、同じ問いが並んでいます。

ただし、私が確認できた投稿のうち、頼まれる側が書いたものは、どれもオフィスや事務職の人のものでした。だから「工場でもよくあります」とは書けません。書けるのは、この問いが20年ぶん残っている、というところまでです。

品質のほうには、法令の線がありません

ここからは、品質の話です。

先に、正直なところを書きます。

ここは正直に書きます


品質を理由に業務を制限する規定は、私が探した範囲では見当たりませんでした。

労働安全衛生法は、そもそも安全と健康の法律です。製品の品質を規制するために作られた法律ではありません。労働者派遣法のほうにも、品質を理由に「この業務はさせてはいけない」と決めた規定は見当たりませんでした。

つまり、最終検査を任せていいのか、限度見本の判定を任せていいのか——この問いに、法令は答えを持っていません。

じゃあ何も無いのかというと、そうでもありません。さっき出てきた「契約に書いてある業務の中か」という線は、品質のほうにもそのまま効きます。

その作業が、労働者派遣契約に定めた「業務の内容」の中に入っているかどうか。品質にかかわる作業を任せていいかは、法令の問題というより、契約の問題です。

ここで「じゃあ品質は自由でいい」とは、もちろんなりません。

ただ、法律に無いというだけで、線が無いという意味ではありませんでした。

品質のほうにも、線はありました。法令ではなく、「会社の認定」という名前で

私の職場には、検査責任者とか、スキル認定者とか呼ばれている認定があります。

その作業をしてよい人が、名前として決まっている。法令ではありません。会社の側で決めている線です。

そして、これはたぶん、私の職場だけの話ではありません。品質マネジメントの規格である ISO 9001:2015 には、7.2「力量」 という名前の項目があります。

雇用形態ではなく、力量。そういう名前の項目が、品質の側の考え方には最初から入っています。(※規格の本文はここでは引用していません。理由は記事の最後に書きます)

だから、たぶんこうです。

私の職場にあった「検査責任者」や「スキル認定者」は、その"力量"の実物なんだと思います。名前が会社ごとに違うだけで。

「たぶん」と書いたのは、ISO 9001 は認証を受けている組織の話であって、すべての工場の話ではないからです。あなたの職場にも必ずあります、とは書けません。名前は違っても、似たものがあるかもしれない——そこまでです。

そして、ここからが私にとっていちばん正直なところです。


ただ、その認定がどの作業までをカバーしているのか、私は詳しく知りません。
知らないままやっている作業が無いとは、言い切れないと思っています。

これは誰かを責める話ではなく、私が知らない、という話です。

だから、品質のほうで言えることは1つだけになります。

新しく何かを立ち上げる話ではありません。もうあるものを、見るだけです。

あなた一人の胸先三寸で決めるしかない、と思っていたところに、たぶんもう、そういう名前のものが会社の側にあります。

品質の側のルールが、なぜあの形になっているのかは、こちらに書きました。

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法令の線と、会社の認定の線。どちらも作業に付いていて、私はどちらでも人を見ていました

先に書いておきます。その線が見えない場所に置かれていたのは、あなたのせいではありません。

ここまでで、線が2本出てきました。

危険な作業品質にかかわる作業
迷う重さ同じ同じ
法令の線ある(免許・技能講習・特別教育)無い
会社の認定の線免許や教育の記録という形で存在するある(検査責任者・スキル認定者のような認定)
その線が付いているのは人ではなく、作業人ではなく、作業

もう一度、まとめて書きます。

危険のほうには、法令の線があります。品質のほうには、ありません。
それでも、品質のほうに線が無いわけではありませんでした。名前が「法令」ではないだけです。
——そして、法令の線も、会社の認定の線も、付いているのは人ではなく、作業のほうです。

それなのに私は、どちらの場面でも、人のほうを見ていました。

正社員か、派遣か、契約社員か。そこを見て決めようとして、決められなかった。

だから、こうなります。

どちらも、あなたの判断力の問題ではありませんでした。線が、見えていなかっただけです。

見えていない線の上で、一人で線を引こうとしていた。引けなくて当たり前です。そして引けないまま、自分でやってきた。

そのほうが早いし、誰にも何も言わなくて済みます。

ただ、次の日もまた、同じところに立ちます。

最後に、1つだけ返しておきたいことがあります。


あなたが気を使ったこと自体は、間違っていません。危ない作業を誰にでも振っていいとは思わなかった。その感覚は正しいです。向いていた先が「雇用形態」だっただけです。

法律のほうが先に、「責任の重さ」と雇用形態を切り離しています

「派遣の人に、責任の重い仕事を頼むのは悪いんじゃないか」——そう思って手が止まるとき、法律のほうはどう見ているか、という話です。

派遣法には「職務の内容」という言葉の意味が定義されていて、それは「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」のことだ、と書かれています(26条8項)。

責任の重さが、法律用語として定義されている。私はこれを見たとき、少し驚きました。

そして30条の3の1項では、その職務の内容などを考慮して、派遣で働く人と、派遣先の通常の労働者の待遇について、こう決めています。

派遣元事業主は、…不合理と認められる相違を設けてはならない。

労働者派遣法 第30条の3第1項(e-Gov法令検索/太字は筆者)

ここで、歯止めを3つ入れておきます。

1つ目。「法律が、派遣の人に責任ある仕事を任せてよいと言っている」——これは言い過ぎです。30条の3は待遇の規定で、しかも義務を負っているのは派遣元です。あなたが待遇を動かせるわけでもありません。書けるのは「法律のほうが先に、責任の重さと雇用形態を切り離して扱っている」までです。

2つ目。だから遠慮せずどんどん任せましょう、とも書きません。それをやると、資格が要る作業を資格の無い人に振る、という逆側の事故になります。変えるのは遠慮の有無ではなく、遠慮の向き先です。人から、作業のほうへ。

3つ目。2014年の質問サイトに、こう書いている人がいます。事務職の人の投稿で、1件です。

「私の隣には産休上がりのママさん正社員がいるのですが、彼女より私のほうが重い責任の仕事をしています。」

「正社員になれる確約があれば、修行だと割り切って頑張れますが、そんな保障はありません。」

「せめて、正社員の給料並みの時給に上げて貰いたいです。」

言っているのは「任せるな」ではなく、「任せるなら、その重さに見合った扱いにしてくれ」のほうでした。

1件です。「派遣の人はこう思っています」と一般化はできません。そう書き込んでいる人がいる、というところまでです。

それでも、この1件と法律の作りは、同じ方向を向いています。責任の重さは、雇用形態で決まるものとして扱われていない。

誰かに聞ければ、いちばん早いです。でも、聞く相手がいないことがあります

ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれません。「そんなの、聞けばいいじゃないか」と。

そのとおりです。誰かに聞ければ、いちばん早いです。

でも、聞く相手がいないことがあります。

私はこの迷いを、職場の誰かに相談したことが一度もありません。理由は、聞きにくいからではなく、聞く相手がいないからです。

「聞く相手がいない」には、たぶんいろんな形があります。交替勤務で、聞きたい相手がもう帰っている。そもそも誰に聞く話なのかが、はっきりしない。

どれにしても、そうしているうちに、この迷いは「誰かに聞いてよい問題」ではなく、「仕事の一部」みたいな顔をしてきます。

だから、この記事は「言い方」の話をしません。言い方をいくら磨いても、届く先が無いので。

誰かに聞ければいちばん早いです。でも、聞く相手がいないことがあります。

その場合でも、見られるものが1つだけあります。人ではなく、作業のほうです。

明日できること 振る前に、人ではなく作業のほうを先に見る

長くなったので、明日の話に降ろします。やることは1つです。

明日できること


明日、「誰に振るか」を決める前に、「その作業に、免許か特別教育が要るか」を先に見る。順番を入れ替えるだけです。

要る作業なら、雇用形態を考える必要がそもそもありません。受けていない人は、そもそも就けないので。

要らない作業なら、雇用形態で迷う理由がありません。

お金はかかりません。誰かの許可も要りません。誰にも声をかけずに、その場で終わります。

はしごにしておきます。どれを選んでも大丈夫です。

はしご(5段)

  • 最小(まずは、これだけで十分です)
  • もう一歩やれる日は——就業条件が書かれたものを探してみる
  • 品質の作業で迷ったときは——その作業が、どの認定の範囲かを探してみる
  • 自分でやると決めたときも、同じ線がかかります
  • 見て分からなかったら——その場で、自分ひとりで決めない

最小(まずは、これだけで十分です)

振る前に、人ではなく作業のほうを先に見る。その作業に、免許・技能講習・特別教育が要るかどうか。

これだけで、「誰に振るか」で止まっていた一拍の中身が入れ替わります。

もう一歩やれる日は——就業条件が書かれたものを探してみる

その作業が、契約に定めた「業務の内容」に入っているのかどうかを見る、という段です。

さっきの指針(派遣先が講ずべき措置に関する指針)には、こういう項目があります。

労働者派遣契約で定められた就業条件について、当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に掲示する等により、周知の徹底を図ること。

派遣先が講ずべき措置に関する指針 第二の二(厚生労働省/太字は筆者)

その紙は、あなたの職場のどこかに、既にあることになっています。

ただ、実際のところを書きます。

私は、目の前に貼ってあるのを見たことがありませんでした。共有ファイルを探して、やっと見つけました。

質問するか、自分で見つけにいかないと、出てこないものだと思います。

だから「探せば必ず見つかります」とは書けません。私の職場では、探したら出てきた。それだけの話です。

そして、見つからなくても、あなたが悪いわけではありません。用意することになっているのは、派遣先の側なので。

品質の作業で迷ったときは——その作業が、どの認定の範囲かを探してみる

検査責任者やスキル認定者のような認定が職場にあるなら、その認定が、どの作業までをカバーしているのかを探してみる。

ここで向きを間違えないでください。

見るのは「この人は認定を持っているか」ではありません。「この作業は、どの認定の範囲か」です。人ではなく、作業のほうです。

そして正直に書くと、私も、その範囲を詳しく知りませんでした。探して分からなければ、下の「大」に渡してください。

自分でやると決めたときも、同じ線がかかります

私はだいたいこれです。迷って、結局自分でやる。

それでいいと思っています。やめましょう、とは書きません。

ただ1つだけ。その作業に資格や特別教育が要るなら、同じ線が自分にもかかります。線は人を選ばないので、相手にも自分にも同じようにかかる。

だから、自分でやると決めた場面でも、「自分がその教育を受けているか」を、そこで一度だけ見る。品質のほうも同じです。その作業が認定の範囲に入っているかどうかも、自分でやる場合に同じようにかかります。

これは反省の話ではありません。見るものが1つ増えるだけです。

見て分からなかったら——その場で、自分ひとりで決めない

「これは契約の業務の内容に入っているのか」「この作業は、その認定の範囲に入っているのか」——見ても分からない、ということはあります。

そのときは、その場で自分ひとりで決めない。

上げる先がある人は、上げてください。無い人は、決めないまま置いておくのでも構いません。

止めるというのは、判断であって、決裁ではないので。

異常に気づいたとき、まず止めるという判断については、こちらに書きました。

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線を引いていたのは、あなたの気の使い方ではありませんでした

まとめます。

この記事のまとめ

  • 任せていいかどうかは、雇用形態では決まりません。決まるのは、その作業に免許・技能講習・特別教育が要るかのほうです(安全衛生法61条1項・59条3項)
  • その教育を用意することになっているのは、派遣では派遣先の側です(派遣法45条3項・5項)。「もまた」の3文字があるかどうかで、誰の義務かが分かれています
  • 教育しないまま働かせることになる条件なら、そもそも派遣してはいけないことになっています(派遣法45条6項)。あなたが朝そこで気づく前に、契約の段階で止まることになっている話です
  • もう1本の線は「その作業が、契約に定めた業務の内容の中か」(派遣法26条1項1号・39条)。契約違反の指示をしないよう指導することとされています(派遣先が講ずべき措置に関する指針)
  • 品質のほうに、法令の線は見当たりませんでした。でも会社の認定という形の線はありました。新しく立ち上げる話ではなく、もうあるものを見る話です
  • 法律のほうが先に、責任の重さと雇用形態を切り離して扱っています(派遣法26条8項・30条の3)
  • 明日できることは1つ。振る前に、人ではなく作業のほうを先に見る

最後に、もう一度だけ。

振る前の一拍は、たぶんこれからも無くならないと思います。私も、たぶん無くなりません。

ただ、その一拍のあいだに見るものが、人から作業に変わるだけで、決め方は変わります。

線を引いていたのは、あなたの気の使い方ではありませんでした。

そして、その線は。

聞く相手がいなくても、見るものはあります。

同じラインに立っていて、期限があるのは自分だけ、という側の話は、こちらに書きました。

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言いたいことがあるのに言えない、というときの話は、こちらに書きました。

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この記事の出典


・労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第59条・第61条・第72条|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第4条・第26条・第30条の3・第39条・第45条|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088

・労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第36条・第81条|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032

・派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号/最終改正 令和2年厚生労働省告示第346号)第二の二|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005670&dataType=0&pageNo=1

・ISO 9001:2015(品質マネジメントシステム—要求事項)箇条7.2「力量」

・Yahoo!知恵袋(派遣社員は責任を負わないという人を見かける、という投稿とその回答・2023年)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14281763314

・Yahoo!知恵袋(派遣なのに正社員より重い責任の仕事をしている・2014年)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12127860522

・Yahoo!知恵袋(派遣なのにここまで広範囲の業務をやらせるのか・2005年)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q145195474

・Yahoo!知恵袋(派遣がやるなりの仕事をしたい・2020年)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12223124127

※法令の条文は著作権法第13条により著作権の対象外のため、そのまま引用しています。条文の引用中の「…」は中略です。
※ISO 9001の規格本文は引用せず、項目番号・項目名と一般的な考え方のみを紹介しています。規格の内容を正確に確認したい場合は、日本規格協会などで規格そのものをご覧ください。
※指針は告示です。この記事では「〜することとされています」という書き方にとどめており、個別の職場の運用が指針に沿っているかどうかを判定するものではありません。
※法令・指針の情報は、いずれも2026年9月6日〜7日時点で確認したものです。最新の情報は各ページでご確認ください。
※この記事は、個別の契約や事案が法令に適合するかどうかを判定するものではありません。

  • この記事を書いた人

アヴァン

はじめまして、アヴァンです。電子部品系の工場で働く、現役の製造業ワーカーです。ミスが怖い夜、辞めたくなる朝、なかなか覚えられなくて落ち込む日——現場で私自身がつまずいたことや、そこで見つけた小さなコツを、同じ目線で書いています。えらそうに教える場所ではなく、あなたが明日もうちょっと楽になるための「保健室」でありたいと思っています。

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