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室温は40度近い。成形機のそばは、立っているだけで汗が出る。送風機はあるけど、ずっと当たっていられる場所じゃない。
それでも「暑いので休ませてください」とは、なかなか言えない。
言ったら評価が下がるかもしれない。周りも我慢している。だから自分も我慢する。我慢することが、頑張ることだと思っていた。
そういう人に向けて書いています。先に結論から言います。
工場の暑さは、あなたの気合いでどうにかする話ではありません。会社の側に、いくつも決まりごとがあります。
塩と飲料水を備えること。休める場所を作ること。屋内の温度を調節すること。そして2025年6月からは、「具合が悪くなったら誰に、どう言うのか」を決めて、作業者に伝えることまでが決まりになりました。
この記事は「会社を訴えましょう」という話ではありません
逆に「気合いで乗り切ろう」という精神論でもありません。何が決まっていて、自分では何を確かめられるのか。 そこが分かると、我慢していた自分を責めなくてよくなります。そこまでを目的にした記事です。
暑さを我慢するのは、あなたの気合いの問題ではありません
まず、いちばん大事なところから。暑い職場にいると、だんだんこう思うようになります。
「みんな平気そうだから、自分が弱いだけだ」
「これくらいで音を上げたら、根性がないと思われる」
でも、体にかかる暑さの負担は、人によってまったく違います。
同じ部屋にいても、着ている作業着が違えば負担は変わります。連休明けかどうかでも変わります。前の日に眠れたかどうかでも変わります。これは根性の話ではなく、体の反応の話です。
しかも国は、暑さの管理を「各自の心がけ」に任せていません。会社がやるべきこととして、法令に書いています。
順番に見ていきます。
工場は「熱中症は外の話」ではありません
熱中症というと、建設現場や屋外作業の話だと思われがちですよね。私もそう思っていました。でも、数字はそうなっていません。
厚生労働省がまとめた2024年(令和6年)の集計では、職場の熱中症で亡くなった方・4日以上休んだ方の合計は1,257人でした。統計を取り始めてから、いちばん多い年です。
そして業種別でいちばん多いのは、製造業(235人)でした。建設業は228人です。
| 2024年 | 死傷者数 |
|---|---|
| 製造業 | 235人(いちばん多い) |
| 建設業 | 228人 |
| 運送業 | 186人 |
| 全体 | 1,257人 |
工場は、熱中症が起きる場所の中心にいます。
考えてみれば、当たり前かもしれません。機械が並んでいれば機械の熱がこもります。炉や成形機があれば、そばは200度近い。屋根と壁が金属なら、外の熱がそのまま入ってきます。
「空調があるから大丈夫」ではない
ここが大事なところです。
私の職場にも、全体空調はあります。扇風機もあります。それでも室温は40度近くあります。
法令の側も、実はそこを見ています。労働安全衛生規則の第606条には、こう書かれています。
事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則 第606条
「適当な」と書いてあるのがポイントです。 設備が付いているかどうかではなく、効いているかどうかが問われている書き方なんですね。
さらに、この条文について国は2025年5月の通達で、こう補足しています。暑さ指数(WBGT)28度以上、または気温31度以上の場所で1時間以上続く作業がある屋内作業場は、この第606条の対象に含まれる、と。
つまり「屋内だから関係ない」は成り立ちません。
会社の側にある決まりごと(何が義務で、何が努力義務か)
では、具体的に何が決まっているのか。工場に効くものだけ並べます。
| 条文 | 何を求めているか | 強さ |
|---|---|---|
| 安衛則 第617条 | 多量の発汗を伴う作業場では、労働者に与えるために塩と飲料水を備える | 義務 |
| 安衛則 第614条 | 著しく暑熱な作業場では、作業場の外に休憩の設備を設ける | 義務 |
| 安衛則 第613条 | (一般の)休憩の設備を設ける | 努力義務 |
| 安衛則 第606条 | 暑熱な屋内作業場の温湿度を調節する | 義務 |
| 安衛則 第607条 | 暑熱な屋内作業場の気温・湿度を半月に1回、定期に測る | 義務 |
| 安衛則 第608条 | 溶融炉など多量の熱を出す設備からのふく射熱から守る | 義務 |
| 安衛則 第612条の2 | 具合が悪いときの報告体制と対応手順を決めて、作業者に周知する(2025年6月〜) | 義務 |
塩と飲料水は「備える」ものです
第617条の条文は、とても短いです。
事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。
労働安全衛生規則 第617条
「塩及び飲料水」=両方です。そして「備えなければならない」=努力目標ではありません。
私の職場には、休憩所に塩飴が置いてあります。ウォーターサーバーにはスポーツドリンクもあります。この点については、備えがあるということになります。
あなたの職場はどうでしょうか。片方しかない、という職場もあると思います。 ここは一度、見てみてもいい場所です。
休憩する場所は「作業場の外」
第613条と第614条は、並べて読むと違いがはっきりします。
- ふつうの休憩設備 → 設けるように努めなければならない(613条・努力義務)
- 著しく暑熱な作業場の休憩設備 → 作業場の外に設けなければならない(614条・義務)
暑い現場では、休む場所の扱いが一段上がるんですね。
さらに国は通達で、その休憩設備の中の温度・湿度を下げる措置(直射日光を遮る、冷房を置く、ミストファンを使うなど)が望ましい、としています。休憩所が暑いままというのは、想定されている姿ではないということです。
罰則について(ここは煽りません)
第612条の2は、労働安全衛生法の第22条にもとづく決まりです。第22条は「高温などによる健康障害を防ぐために必要な措置を講じなければならない」という条文で、違反したときの罰則がある条文のグループに入っています(同法第119条第1号)。
ここは、はっきり書いておきます
この記事は「会社を通報しましょう」という話ではありません。
知っておいてほしいのは、ひとつだけです。暑さの管理は「余裕があればやること」ではなく、決まりごとの側に置かれている。 だから、あなたが「暑い」と感じたことを、後ろめたく思う必要はないんです。
「体調が悪くなったら申し出て」と言われても、言えないとき
ここがこの記事のいちばん大事な章です。
私の職場では、朝礼で言われます。「体調が悪くなったら申し出ること」と。
塩飴もあります。スポーツドリンクもあります。全体空調も扇風機もあります。
それでも私は、「暑いから冷房をつけてほしい」とは言えていません。
言えば評価が下がるかもしれない。そう思ってしまうからです。物があることと、言えることは、別なんですね。
2025年6月に、法令が足したのはまさにそこでした
労働安全衛生規則に、第612条の2という条文が新しく入りました。施行は2025年6月1日です。内容を、かみくだくとこうなります。
安衛則612条の2が求めていること
① 具合が悪くなった人が「その旨を報告できる体制」をあらかじめ作って、作業者に周知すること
② 具合が悪くなった人にどう対応するか(作業から離す、体を冷やす、必要なら医師に診てもらう)の手順をあらかじめ決めて、作業者に周知すること
条文の第1項は、こう書かれています。
事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する作業従事者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する作業従事者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の作業従事者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する作業従事者に対し、当該体制を周知させなければならない。
労働安全衛生規則 第612条の2第1項
長いですが、最後の「周知させなければならない」だけ見てもらえれば十分です。
義務の中身は「対策をしろ」ではなく、「決めて、伝えろ」なんですね。
なぜ「伝えること」が義務になったのか
理由は、統計にはっきり出ています。厚生労働省は、2024年に職場の熱中症で亡くなった31件を分析しています。その結果がこれです。
- 発症時・緊急時の措置を周知していたことを確認できなかった事例 … 20件
- 暑さ指数(WBGT)の把握を確認できなかった事例 … 24件
- 熱中症予防のための労働衛生教育の実施を確認できなかった事例 … 14件
31件のうち20件で、「誰に、どう言えばいいのか」が確認できなかった。
つまり、「暑くてしんどいとき、誰に言えばいいか分からない」という状態は、あなたの職場だけの話ではありません。 亡くなった方の職場でも、同じことが起きていた。だから法令が変わったんです。
知らないのは、あなたが不真面目だからではありません。
「申し出てね」だけだと、「誰に」が抜けている
ここは公平に書きます。
国の通達は、周知の方法について「朝礼における伝達等、口頭でも原則として差し支えない」としています。つまり朝礼で言っている職場は、それ自体が悪いわけではありません。
ただし通達は、同時にこうも書いています。報告を受ける責任者の連絡先と、その人への連絡方法を定めて明示すること。そして報告先が作業者に確実に伝わっている必要がある、と。
「体調が悪くなったら申し出て」——ここで止まっていると、「誰に」が抜けます。
そして人は、その場になると迷います。班長? 係長? 安全担当? いま手が離せなさそうだけど? 迷っている間に、言うタイミングを逃す。
だから、この記事のいちばん実用的な提案は、このあとの章の1行です。
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自分で確かめられる目安があります
「言う・言わない」で迷うのは、自分の状態が「言っていいレベル」なのか分からないからでもありますよね。
実は、国の資料には自分で確かめられる目安が書いてあります。厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」の解説には、熱への暴露を止めることが必要とされる兆候として、こんな例が挙がっています。
- 作業を始める前より、体重が1.5%を超えて減っている(60kgの人なら、約0.9kg)
- 1分間の心拍数が、数分間続けて「180 − 年齢」を超えている
- 作業のピークから1分後の心拍数が120を超えている
- 休憩しても、体温が作業前に戻らない
- 急に強い疲労感、吐き気、めまいなどが出た
「体重が0.9kg減っていたら休んでいい」——こう言われると、ずいぶん判断しやすくなりませんか。
要綱も、休憩場所に体温計や体重計を置いて、必要なときに確認できるようにすることが望ましいとしています。
症状は「自分で感じるもの」と「周りが気づくもの」がある
| 例 | |
|---|---|
| 自分で感じる (自覚症状) | めまい、こむら返り・筋肉痛、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、体が熱い |
| 周りが気づく (他覚症状) | ふらつき、生あくび、失神、大量の発汗、けいれん |
そして、いちばん大事な一文がこれです。
「意識があるかどうか」だけで判断しないこと。 返事がおかしい、ぼーっとしている——普段と様子が違う場合も「異常あり」として扱うのが適当、と国の資料は書いています。
ここは、はっきり書いておきます
体調の判断を、自分だけでしないでください。 上の目安は「休んでいい理由」を持つためのものであって、自己診断のためのものではありません。おかしいと思ったら、その場で人を呼んでください。迷ったときは救急安心センター(#7119)などに相談する方法もあります。
また、持病がある方や、薬を飲んでいる方は事情が変わることがあります。国の資料も、糖尿病・高血圧症・心疾患・腎不全などは熱中症の発症に影響することがあると挙げています。心配なときは主治医や産業医に相談してください。 ここは私が書ける範囲を超えます。
盆休み明けがきついのは、たるんでいるからではありません
連休明けの初日。前と同じ作業なのに、やたらきつい。「休みボケだ」と言われたこと、ありませんか。
これも、気合いの話ではありませんでした。
暑さへの慣れは、4日で抜け始めます
体が暑さに慣れることを暑熱順化(しょねつじゅんか)といいます。国の要綱には、こう書かれています。
- 慣れるには、7日以上かけて暑い環境にいる時間を少しずつ伸ばす
- 暑さから離れると、4日後には慣れが目に見えて失われ始める
- 3〜4週間で、完全に失われる
つまり、盆休みで1週間現場を離れたら、体は「慣れていない状態」に戻りかけているということです。
要綱は、特に注意が必要な場面として次を挙げています。
- 梅雨から夏になる時期に、気温が急に上がったとき
- 新しくその作業を始めるとき(=新人・異動してきた人)
- 長い間その作業場所を離れて、また戻ってきたとき(=連休明け・長期の欠勤明け)
新人がバテるのも、休み明けがきついのも、国の資料が「そうなる」と書いていることです。
慣れていない人は、基準そのものが低い
国が示している暑さ指数(WBGT)の基準値は、「暑さに慣れている人」と「慣れていない人」で別の数字になっています。
| 作業の強さ | 慣れている人 | 慣れていない人 |
|---|---|---|
| 軽い手作業・小さい部品のドリル作業・コイル巻きなど | 30℃ | 29℃ |
| 材料を断続的に持つ・軽い台車を押すなど | 28℃ | 26℃ |
| 重量物の運搬・ハンマー作業など | 26℃ | 23℃ |
同じ職場、同じ作業でも、慣れているかどうかで基準が2〜3度違う。 隣の人が平気でも、あなたがきついのは、おかしなことではありません。
着ているものの分も、足し算されます
もうひとつ。服の分だけ、暑さ指数に上乗せして考えるという決まりがあります。
| 着ているもの | 上乗せする値 |
|---|---|
| ふつうの作業服 | 0 |
| 作業服の上につなぎ服(二重に着る) | +3 |
| つなぎ服+不透湿性のエプロン | +4 |
| 通気しないつなぎ服(フードなし) | +10 |
| フードが付いている場合 | さらに +1 |
作業服の上につなぎを着ているだけで、3度分の上乗せです。
同じ部屋にいても、着ているものが違えば体にかかる負担は違う。「隣の人が平気だから自分も平気なはず」は、成り立たないんですね。
ちなみに、睡眠不足も熱中症の発症に影響することがあると国の資料は挙げています。夜勤や交替勤務で眠りが削れている方は、この記事もどうぞ。
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明日、ひとつだけできること|「報告先って誰になりますか」
ここまで読んで、「で、自分に何ができるんだ」と思いますよね。
冷房をつけさせることはできません。 設備の話には決裁が要ります。私たちにその力はない。それは正直に書いておきます。
でも、決裁が要らなくて、角も立たなくて、その場で効くことが1つだけあります。
明日、これだけ聞いてみてください
「熱中症のときの報告先って、誰になりますか」
これを、朝礼のあとにでも一度聞いておく。それだけです。
なぜこれが効くのか
1つ目。これは会社が答えるべきことだからです。 第612条の2は、報告体制を作って周知することを事業者の義務にしています。聞かれた側は、答える立場にいます。 クレームではなく、確認です。
2つ目。聞いた時点で、あなたの中の迷いが消えます。 「誰に言えばいいんだろう」で止まらなくなる。その場の数十秒が変わります。
3つ目。角が立ちません。 「暑いから何とかしてください」は要求に聞こえますが、「報告先は誰ですか」は確認です。しかも法令の話なので、聞かれた側も動きやすい。
もし「そんなの決まってないよ」と返ってきたら、それはそれで分かったことになります。責める必要はありません。 決まっていないと分かっただけで、あなたは次にどうするか考えられます。
もうひとつ|一人にならない、一人にさせない
これも決裁が要りません。そして、たぶんいちばん大事です。
私の職場では、具合が悪くなった人には休憩を取らせています。 現場は動いていると思います。そのうえで、国の通達が足している点が3つあります。
① 体を冷やすこと
作業から離すだけでなく、体を冷やす。作業着を脱がせて水をかける、十分に涼しい場所へ移す、ミストファンを当てる。氷状の飲料(アイススラリー)で体の中から冷やす方法も挙げられています。
② 一人きりにしないこと
通達は、はっきりこう書いています。容態が急変することがあるので、熱中症を生じたおそれがある人を一人きりにせず、ほかの人が見守ることが重要、と。
③ 「治った」の判断を急がないこと
帰宅後も含め、時間が経ってから悪化することがある。だから回復の判断は慎重に、と通達は書いています。
これは、実際に起きていることです
厚生労働省の資料に載っている2024年の死亡事例のうち、製造業の3件は、いずれも一人になったあとに発見されています。工場内で体調不良になり更衣室へ向かったあと。終業時刻のあと。勤務が終わって帰る途中。
年代も20代から60代までばらついていて、若ければ大丈夫、という話でもありませんでした。
脅すつもりで書いているのではありません。伝えたいのはこれだけです。
しんどそうな人がいたら、そばにいる。自分がしんどいときは、一人にならない。
「大丈夫?」と声をかけるのは、決裁も資格も要りません。今日からできます。
それでも、暑いままの職場のこと
ここまで、会社の側にある決まりごとを並べてきました。でも、決まりがあることと、明日から涼しくなることは違います。 それも現実です。
まず、職場を見てください(買う前に)
先に書いておきます。経口補水液や塩タブレットは、本来は会社が備えるものです。 第617条をもう一度出します。
事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。
労働安全衛生規則 第617条
だから、ここに買い物の案内は置きません。 まず休憩所を見てください。塩飴は? 飲み物は? 片方しかないなら、そこは聞いてみていい場所です。
ちなみに、水分と塩分の目安も国の資料に書いてあります。0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウム40〜80mg/100mLのスポーツドリンクや経口補水液を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度。「のどが渇いてから」ではなく、定期的に、が基本です。
注意
塩分の摂取を制限されている方は、この目安をそのまま当てはめないでください。 主治医や産業医に相談してください。
会社が用意していない分を、自分で足すなら
そのうえで、自分で足すしかないものの話をします。
ひとつは、ファン付き作業着(空調服)です。
私の職場では支給されていません。みんな自腹で買ってきています。会社から支給されるのは、汗をよく吸うインナーシャツです。
国の要綱も「身体を冷却する服の着用も望ましい」と書いているだけで、支給までは求めていません。望ましいと国が言っているものを、全員が自分で買っている——それが現実です。
もうひとつは、暑さ指数計(WBGT計)です。
これは「会社に文句を言うため」の道具ではありません。自分の作業場所が、実際に何度なのかを知るための道具です。
思い出してください。2024年に亡くなった31件のうち、24件で暑さ指数の把握が確認できませんでした。私も、現場でWBGT計を見たことは一度もありません。
数字が分かると、「自分がだらしないのか」で悩まなくて済みます。 「今日は基準を超えている」と分かるだけで、休憩を取ることへの後ろめたさは、だいぶ減ります。
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「暑さの話を、仕組みとして扱える人」が職場にいますか
もうひとつだけ。この記事で出てきた条文を思い出してください。気温と湿度を半月に1回測る(第607条)。屋内の温湿度を調節する(第606条)。
これらは「安全」というより「労働衛生」の領域です。そして労働衛生を担当するのが、衛生管理者という国家資格を持った人です(一定の規模の事業場には選任が必要とされています)。
あなたの職場に、暑さの話を「仕組み」として扱える人はいますか。
いるなら、その人に報告先を聞くのがいちばん早いです。いないなら——これはすぐには変わらない話ですが、そういう役割があること自体を知っておくと、次に自分がどこへ進むかの選択肢が1つ増えます。
働きながら学ぶ手段もあります。ここでは「そういう道もある」というところまでにしておきます。
※今の職場が悪いという話ではありません。 そして急ぐ必要もありません。 ここは「先に知っておきたい人だけ」の選択肢として置いています。
よくある質問
室温40度って、違法じゃないんですか?
「何度以上は違法」という数字の線は、法令には書かれていません。第606条が求めているのは「適当な温湿度調節の措置」で、これは設備の有無ではなく効いているかを見る書き方です。ただし、暑さ指数28度以上または気温31度以上の場所で1時間以上続く作業がある屋内作業場は、この条文の対象に含まれると国が通達で示しています。「屋内だから対象外」ではない、というところまでは言えます。
塩飴だけ置いてあるんですが、それでいいんですか?
第617条は「塩及び飲料水」と書いています。両方です。片方しかないなら、そこは確認してみてもいい場所だと思います。ただし、備え方の形までは条文に書かれていないので、「違反だ」と決めつけるのは避けたほうがいいです。
空調服が自腹なのは、おかしくないですか?
気持ちは分かります。ただ、支給の義務は法令にはありません。 国の要綱が「身体を冷却する服の着用も望ましい」としている段階です。だからこの記事でも「おかしい」とは書けません。現実として自腹の職場は多い、というところまでです。
WBGT計(暑さ指数計)が職場にありません。
まず、第607条は暑熱な屋内作業場について半月に1回、定期に気温と湿度を測ることを義務にしています。測定そのものは行われているかもしれません(記録が現場に出てこないだけ、ということもあります)。
暑さ指数については、環境省が「熱中症予防情報サイト」で地域ごとの数値を公表しています。屋内の実際の値とは違いますが、その日が危ない日かどうかの目安にはなります。
持病があります。何に気をつければいいですか?
これは私が答えられる範囲を超えます。国の資料は、糖尿病・高血圧症・心疾患・腎不全・自律神経に影響する薬を飲んでいる場合などは、熱中症の発症に影響することがあると挙げています。必ず主治医や産業医に相談してください。 そのうえで、会社に伝えておくべきことがあるかも聞いておくと安心です。
屋内の作業でも、2025年6月の決まりの対象になりますか?
なります。国が示している条件は「暑さ指数28度以上、または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業」で、屋内・屋外を分けていません。移動中も含まれるとされています。また、この条件に当てはまらない場合でも、作業の強さや着ているものによってはリスクが高まるので、これに準じた対応に努めることとされています。
KY活動や朝礼での伝達の話は、この記事もあわせてどうぞ。
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KY活動が形だけになっているとき|KYは「新しい危険を見つける場」ではありません
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まとめ
長くなったので、3つだけにまとめます。
この記事のまとめ
1. 暑さの我慢は、気合いの問題ではありません。 塩と飲料水、休める場所、屋内の温湿度。会社の側に決まりごとがあります。
2. 2025年6月からは「誰に、どう言うか」を決めて伝えることまでが義務になりました。 「言い先を知らない」のは、あなたの落ち度ではありません。
3. 明日できることは2つ。 「熱中症のときの報告先って誰になりますか」と一度聞いておくこと。そして、しんどいときに一人にならない、一人にさせないこと。
我慢していたのは、あなたが弱いからではありません。我慢が頑張りだと思わされていただけです。
今年の夏を、無事に終わらせましょう。


出典
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第22条・第119条/e-Gov法令検索
- 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第606条・第607条・第608条・第612条の2・第613条・第614条・第617条/e-Gov法令検索
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
- 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」(令和3年4月20日 基発0420第3号/令和7年5月20日 基発0520第7号 一部改正)
- 厚生労働省「2024年(令和6年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
※この記事は法令・国の通達と、筆者の現場での経験をもとに書いています。個別の判断(体調・持病・職場の状況)については、医療機関・産業医・お住まいの地域の労働基準監督署にご相談ください。